-いつの頃からだったろう、君の存在に気づいたのは
--またその話か
-いや、今日こそははっきりしておきたいんだ
--別にそんなことどうでもいいじゃないか
-じゃあ、君はいつからここにいるのか覚えていると言うのかい?
--そういうことも忘れたなあ。ごく最近と言えばそんな気もするし、ずっと以前からと言えばそういう気もする
-わからないな
--そう、それでいいんだよ。ぼくは君が気づく前から、君のそばにいるんだから
-生まれた時のぼくはどうだった?
--どうだったって、今と何ら変わらないよ。見えるものを見て、聞こえるものを聞いていただけなんだから
-生まれた時と変わらないってことはないと思うんだけど
--変わってないよ。変わったと思うのは君の錯覚だよ
-でも、現にぼくは成長しているじゃないか
--成長ねえ。ただ服を着替えただけと思うんだけど
-ああ、毎日服は着替えているよ
--そういう意味じゃない。人は誰も、存在という服を着ているのだ。その時その時、その場その場で、その服は変わっていく。しかし、服はいつも変わるけど、それを着る人はいつも同じなんだ
-よくわからない
--わからなくていいんだ
-ぼくには多くの敵がいる。いったいどう対処したらいいんだろう
--気にするな
-気にするなと言われても、気になるものはしょうがない
--君が敵だと思うから敵なんだ。敵と思わなければ気にならないだろ
-敵と思うななんて、そんなことできるわけないじゃないか
--相手の存在が嫌なんだろ?
-そうだよ
--『嫌』を心の中から追い出せばいいじゃないか
-そんなこと出来るはずないだろ
--じゃあ、『嫌』を楽しんだらどうだい
-ぼくは小さい頃から、ほら吹きって言われてるんだけど
--それはしかたないだろう
-何で?
--ぼくがガイドラインだからさ
-誰がそんなこと決めたんだ?
--誰がって、君が生まれる前から決まっていたことさ
-誰が決めたんだ?
--君だよ
-ぼくが生まれる前に、君をガイドラインと決めたというのか?
--ああ、そうだよ
-それはおかしい
--どうして?
-無の状態のぼくが、君を認識するわけがないじゃないか
--もちろんだ。だけど、君はちゃんとぼくを選んだんだよ。というより、生まれる前から、君はぼくで、ぼくは君だったんだ
-君は君、ぼくはぼくじゃないか
--それは違う
-どう違うんだい
--ぼくは君だから、ぼくでありうるんだ
-またわからないことを言う
--わからなくていいよ
-君はいったい何者なんだ?
--ぼくか。ぼくはペテン師さ
(2003年6月23日 記)